質問1(松久): | 資源,環境の限界から社会縮小をせざるをえなくなるという場合の経済はどうなりますか. |
解答1(宇仁): | 原稿には書いておりませんが,経済の縮小あるいは拡大の停止は,資源,環境の限界から要請されるものと考えています.CO2排出規制に関してみられたように,資源節約や環境配慮は先進諸国では比較的受け入れられやすいですが,発展途上国では受け入れられにくいという問題があります.発展途上国の経済成長をどこまで許容するか,また発展途上国の合意をいかにして形成するかが大きな論点かと思います.これは経済的問題というよりは政治的問題ですが. |
質問2(松久): | ドイツなどでは,労働時間の短縮やワークシェアリングをしていると聞いています,これの原動力はなんですか.労働組合との力関係ですか. |
解答2(宇仁): | 直接的な契機は1980年代以降の高失業への対策ですが,バカンスの法制化などは60年代から行われていますし,仕事ではなく余暇を生きがいにするという価値観も背景にあります.また,労働組合の強い交渉力も影響しています.またもちろん労働時間短縮の前提条件は高い労働生産性です.一人当たりの労働生産性では米国の方がわずかに上ですが,時間当たり労働生産性ではドイツ,フランスの方が上回ります.一人当たり年間労働時間は日本,米国が約2000時間ですが,ドイツ,フランスは約1500時間です.19世紀半ばまでは約3000時間でしたから,約150年で半減したことになります.さらに今後の100年で半減させることも不可能ではないと思います. |